Growth of the maxilla in three dimensions as revealed radiographically by the implant method.
インプラント法によってX線的に明らかにされた上顎骨の三次元的成長。
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最終更新:
2026/10/14
この記事のポイント
- 上顎骨の成長は、縫合部での成長、骨の添加と吸収、回転、歯列弓の前方移動が組み合わさった3次元的な現象であると報告されています。
- 正中縫合は前方より後方で大きく成長し、左右の上顎骨は水平面内で互いに回転すると示されました。
- 上顎骨は垂直面内でも多くの場合前方回転しており、鼻腔底のリモデリングによりその回転が見えにくくなると報告されています。
文献情報
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この研究でわかったこと
目的
上顎骨の成長を3次元的に明らかにすることです。通常のセファログラム(頭部X線規格写真)では、上顎骨そのものの移動と骨表面のリモデリング(骨の添加・吸収による形の変化)を区別しきれないため、金属インプラントを基準点に用いています。
方法
対象は、正常またはほぼ正常な乳歯咬合をもつ4歳の男児9名で、矯正治療を受けていない症例のみが分析されました。4歳から毎年検査し、7名は21歳以上まで、残る2名も18歳まで追跡されています。4歳時に上顎の頬骨下稜へ左右2本ずつタンタル製インプラントを入れ(側方インプラント)、永久切歯が生えた10〜11歳頃に前鼻棘の下方へ左右1本ずつ入れました(前方インプラント)。同一の個人を4歳から成人まで追った縦断研究である点が大きな特徴です。
結果
- 高さ方向の成長(4歳から成人までの平均):縫合部成長による上顎骨体の下方移動が11.2mm、眼窩底の骨添加が6.4mm、鼻腔底の骨吸収が4.6mm、歯槽突起の骨添加が14.6mmでした。眼窩底の骨添加量は縫合性の下方移動量のおよそ半分であり、著者らは「縫合成長で上顎骨体が下方へ移動し、それを眼窩底の骨添加が代償している」と解釈しています。
- 幅径の成長:代表症例では、側方インプラント間の正中縫合の成長が6.7mm、上顎骨外側面間の距離の増加が9.5mmで、幅径成長では正中縫合の成長が主要な役割を果たすとされています。成長曲線は身長の成長曲線に似たパターンで、縫合部の成長は身長より早く、平均約17歳(全員男子)で終了しました。
- 正中縫合は後方ほど大きく成長:10〜11歳以降の成長量は、前方インプラント間で平均0.9mm、側方インプラント間で平均3.0mmと、後方が前方の約3.5倍でした。このため左右の上顎骨は水平面内で互いに回転し、第一大臼歯間距離は大きく増え、犬歯間距離の増加は小さく、上顎骨の前後的な長さは短くなります。
- 垂直面内の成長回転:インプラントを基準にすると、上顎骨は垂直面内で回転しており、通常は前方回転を示しました。鼻腔底の傾斜があまり変わらないのは、部位ごとに異なる骨吸収が起こるためと説明されています。
- 歯列弓全体が上顎骨体上を前方へ移動:移動量は第一大臼歯部で約5mm、中切歯部で約2.5mmでした。歯列弓長径は短縮し、その内訳は左右上顎骨の水平面内回転による1.0mmと、歯の密集による叢生(歯ならびのガタつき)1.5mmと報告されています。また、頬骨突起前面の輪郭は9症例すべてでインプラントとの関係が安定しており、成長分析に使える自然な基準構造になりうるとされています。
臨床的意味
上顎骨を「前下方へ平行移動する構造物」と単純に捉えるのではなく、回転とリモデリングを伴う3次元的な成長として理解する必要があります。ただし、対象は男児9名と少数で、矯正治療を受けていない症例に限られる点には留意が必要です。
抄読会での議論と発表者の視点
抄読会では、通常のセファロの重ね合わせでは見えない上顎骨の回転を、インプラントを基準にすることで捉えられた点が重視されました。正中縫合の成長が前方より後方で大きいことや、歯列弓の前方への移動が前歯部の叢生に関わる可能性が示された点も、今回の主要なポイントとして整理されています。
矯正をご検討中の方へ
お子さまの成長期には、顎の骨が大きさだけでなく向きや形も変えながら育っていくことが、この研究から示されています。顎の成長や歯ならびについて気になることがある場合は、成長の段階に応じた判断が必要になりますので、矯正歯科で相談してみてください。個々の状態により検査や治療の内容は異なります。
関連: ABOJCの他の論文紹介記事(顎の成長に関するもの)もあわせてご覧ください。
GPの先生方へ
上顎の幅径や前後径の変化は、後方ほど大きく変わる可能性が報告されています。成長期の患者さんの診察では、歯列弓幅径の変化を犬歯部と大臼歯部に分けて観察する視点が参考になります。
矯正の先生方へ
セファロ上の鼻腔底の傾斜だけで上顎骨の回転を判断すると、実際の回転を見落とす可能性があります。頬骨突起前面の輪郭は、重ね合わせの基準構造の候補として報告されています。詳しくは同じ著者グループのインプラント研究に関する記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q: 上顎骨はどのように成長しますか?
A: 本研究では、縫合部での成長、骨の添加と吸収、垂直面と水平面での回転、歯列弓の前方移動が組み合わさって成長すると報告されています。
Q: 上顎の幅はいつ頃まで成長しますか?
A: 本研究の男児9名では、正中縫合の成長は平均約17歳で終了しました。個人差があるため、一般化には注意が必要です。
Q: 歯ならびのガタつき(叢生)は上顎の成長と関係しますか?
A: 歯列弓長径の短縮の一部は、歯の密集による叢生で説明されると報告されています。個別の原因は診察で確認する必要があります。
Q: 気になる場合はどこに相談すればよいですか?
A: 成長期の顎や歯ならびについては、矯正歯科への相談をご検討ください。
発表者コメント
発表担当の田川淳平先生(岡山矯正歯科)が、抄読会で本論文を取り上げました。上顎骨の成長が回転とリモデリングを伴う3次元的な現象であるという理解が、日々の診断の土台になります。
参考文献
- Björk A. Growth of the maxilla in three dimensions as revealed radiographically by the implant method. Br J Orthod. 1977.
本記事は江間秀明(江間ファミリー歯科・矯正歯科 副院長)が監修しました。